彼女を失ってから、人生にぽっかり穴が空いてしまったようだ。スーツを着て、働いて、食事をして。見かけ上は一人の人間として振る舞うことができる。けれど、一日の終わりに近づき、人の視線が消えると、私は曖昧になる。今まで形取っていた社会人という役割が消えて、輪郭がぼやけていく。どういう生き物なんだっけ。どんなふうに生きているんだっけ。ささやかな問いの答えが見つからない。気を紛らわすために、テレビを点ける。映像が流れていく。本を開いてみる。文字が泳いでいる。全て脳を素通りしていく。残された気だるい夜の時間が、いつまでも終わらない。苦しみというほどでもない。体調は悪くないし、医者にかかるほどでもない。ただ、理由のない不安がそばにいて、私の手を離してくれない。それを寂しさと言うのだろう。